現役保険営業マンの「生命保険徒然日記」

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zoom RSS 法制上は存在せず、曖昧にされたままだった第三分野の権益・既得権―日米保険協議が紛糾した原因。

<<   作成日時 : 2011/11/08 19:00   >>

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今回は、かつて日米保険協議の席上で、日米双方の激しい綱引きが繰り広げられた、医療保険やがん保険などのいわゆる第三分野の解禁を巡る交渉に関する興味深い資料を見つけたので、取り上げてまいります。

その興味深い資料とは、山浦広海氏が福島大学の教授時代に執筆した

  • 日米保険協議とGATSサービス交渉(PDF)

    です。

    日米保険協議というと

    1994年、96年の2度にわたって行われた日米保険協議において、アメリカ側が“タフな交渉”を行い、アリコジャパン(現、メットライフアリコ)やアメリカンファミリー生命保険、AIU損害保険などが築き上げた医療保険やがん保険、傷害保険など(第三分野)の市場寡占状態を守るために、日本の保険会社が医療保険などの市場に参加できるのを遅らせた

    とされています。

    では、実際はどうだったのでしょうか?山浦氏の論文には次のようにあります(上記資料・P52〜55より転載)。

     【第三分野問題の基本的性格】

     第三分野における永年の外資系保険会社優遇措置は、日米双方で知られた措置でありながら、その権益ないし既得権は曖昧なままにされてきた。法制上はこの既得権は存在しない。米国側は、外資系保険会社の永年にわたる投資と創意工夫により育成されたのが第三分野市場であり、日本から許与された既得権によるものではないと既得権を否定する。

     こうした既得権が法制上も事実上も存在していないのであれば、第三分野市場は内外全ての保険会社に既に平等に開放されているはずである。国内大手生損保について第三分野の制限もその解除の必要も生じない。そうであれば、第三分野の参入についてわざわざ制限を加えるような保険法改革も行う必要も生じない。まして日米保険協議で第三分野問題を協議する必要も全くない。

     ところが現実事態は全くその正反対であり、第三分野問題が日米保険協議における最大の焦点となった。要するに日米双方がその存在と解釈を曖昧にしている外資系保険会社の既得権益に対し、終結の是非をめぐって日米包括経済協議の開始以来クリントン政権の全生命をかけて日米間で終始紛糾を重ねているのが保険の第三分野問題である。

     保険の第三分野問題のように、自国市場が外国によって締め出され、その開放を他国に求めるという錯倒したマーケット・アクセス交渉は、治外法権解消や植民地解放を図るための植民地外交交渉みたいなものである。その交渉は事実上の既得権存続の終結をめぐる典型的な既得権清算交渉と言える。

     この事実上の既得権を事実上の既得権として存在を認め、その解消のための代償交渉を行うようにすれば論理的な代償交渉が行われ、不必要に日米間で紛糾することもなくなる。ところが、日米双方が当該既得権の存在と解釈を曖昧にしながら事実上の既得権の終結のための清算交渉を行った。そこで、その代償が生損保主要分野の市場開放に対する対日要求とリンクされながら歪曲され、日米間で不必要に紛糾を招く事態を招いたと言える。

     このように、日米通商関係の上で未曾有の対決と紛糾を見た第三分野問題は、錯倒と矛盾に満ちた異常な日米通商関係を露呈した問題である。

     この矛盾は、保守的で非公式な保険市場対外開放政策に根付く、日本にとり、本来なら昭和40年代にも資本自由化に基づく自由化と国際化に向けた保険事業の規制改革を遂行すべき絶好の機会があった。

     しかし、日本は、保険会社の全社的経営効率引き上げを迫る経営効率化行政の保険審議会行政のもとで画一的事業規制の強化を図り、いわゆる護送船団の船足を速めつつ料率自由化を中心とする元受保険事業の自由化を見送った。また、国際化については、日本は、保険の対外市場開放を再保険で行う一方、元受保険では第三分野に限定して新商品の独占的開発利益を非公式に事実上許与しながら外資系保険会社の第三分野への優先参入を誘導してきた。それゆえ、第三分野に外資系保険会社を封じ込めるこの種の市場セグメントに今日における日米対決に至る第三分野問題の根源があるとみることができる。

     第三分野における外資系保険会社に対する優遇措置による事実上の既得権は、内外同等の競争条件を与えるナショナル・トリートメントを超えて国内保険会社に対する待遇を上回る外国優遇措置であるから、モア・ザン・ナショナル・トリートメントというべきである。ここでのモア・ザン・ナショナル・トリートメントの終結を図るのであれば、第三分野問題としてその終結を図るのが本来であり、他の保険分野のマーケット・アクセスに牽連させるべき問題ではない。

     ところが、日本では、昭和14年戦時保険業法ともいうべき旧保険業法の改正を機に、生損保垣根問題として知られる国内生損保事業領域の調整で第三分野を含めて生損保前面相互参入に突入しようとする機運が生じた。そこで第三分野における外資系保険会社の優遇措置を護持することで国内大手生損保参入の抑止を図ることが外資系保険会社にとりにわかに重大なマーケット・アクセス問題とされるに至った。

     第三分野問題は、外資系保険会社の既参入の寡占分野であり、その保全自体はマーケット・アクセス問題にはなりえない。国内競争政策ないし独占禁止政策の視点からすれば、その保全行為が反競争的慣行とすら写る問題である。

     しかしながら、護送船団行政と呼ばれる戦時統制を引きずった戦後の伝統的な画一的保険事業政策のもとで、日本が生損保元受主要分野の本格的な自由化を長らく見送ってきたのも周知の事実である。

     第三分野については、その過少な代償として外資系保険会社を優遇しながら外資系保険会社を事実上第三分野に封じ込めてきた側面がある。その点では、第三分野における外資系保険会社に対する優遇措置の日本側による一方的な終結は新たな代償問題を呼ぶ。

     そこで、日米双方とも、第三分野における外資系保険会社に対する優遇措置の清算については、生損保主要分野の自由化とは別個に対応の代償交渉を行うように運んでいたならばよかった。そうなされていれば、国内大手生損保ないしその子会社の第三分野参入については、論理的で妥当な交渉と妥結が図られていたはずである。

     しかしながら、現実には、高齢化社会の到来で唯一残された成長分野と目される第三分野の市場争奪合戦のために保険法制改革や日米保険協議を舞台とする政府間通商交渉が利用され、利害対立に基づく事実認識の相違や日米双方での論理のすれ違いや合意の表現と解釈の齟齬や感情論を交えて不必要に紛糾させるに至った観がある。

     米国は、第三分野問題に生損保主要分野の自由化を連結させることに日米保険協議の核心を置いた。これにより、米国は、日本に対し、第三分野の現状凍結につきグランドファザーリング(既得権化)を措置させた。
     
     結局、米国としては、第三分野における開発利益の独占的許与がもはやなされない時代になって、米国系保険会社を中心とする外資系保険会社の第三分野における市場寡占体制に対する既得権保全の措置を日米保険協議を通じて文書化し、明確化したかったということなのであろう。1994年合意、1996年合意と二度にわたる第三分野をめぐる日米間の対立と合意の核心はこの既得権保全の文書化にあった。日米保険協議における逆マーケット・アクセス交渉の核心をなす第三分野問題の基本的性格は、この既得権保全の文書化をめぐる日米間の争いであったと言えよう。


    …いわば定説となっている、「第三分野市場の既得権を守る外資系生損保VS第三分野市場への参入解禁を求める国内生損保」という単純な構図とはずいぶん違うようですね。

    もし、山浦氏が論文内で述べている「事実上の既得権として存在を認め、代償交渉を行う」という方法が行われていたらどうなっていたでしょうか?

    ひょっとしたら、国内生保は早い段階で第三分野市場に進出でき、特約の重ね売りで積み上げた経験をもとに、単体の医療保険やがん保険を投入してさらに経験を積み、今よりもずっと外資系生保の強力なライバルになっていたかもしれませんね。

    画像
    ↑、初夏の空をバックにハルジオンで吸蜜中のベニシジミを撮影しました(7月上旬に撮影)。

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