やっぱり変だよ!!医療保険改革③

前回*の続きです。

*前回の記事はこちらです。
  • やっぱり変だよ!!「医療保険改革」② 【石井暎禧氏論文・医療保険改革と「老人終末期医療」~事実に基づいた改革を~より②】

    では、早速本題です。

    【石井暎禧氏論文・医療保険改革と「老人終末期医療」~事実に基づいた改革を~より③】
    ・「終末期医療費」は高額ではなく、「後期高齢者医療」も無駄ではない
     実は終末期医療費が一般の医療費と比較して、さほど高額でなく、また死亡年齢が高くなるにつれ、むしろ減少することは、国立人口問題研究所の府川哲夫氏などのレセプト分析から実証されていることである。またわれわれの病院における生存退院患者と死亡退院患者の医療費分析からも、1件1日あたりの入院費は、いずれの年齢層でも死亡患者の方が低く、また後期高齢者の1件1日当たり入院費は、全期高齢者より低いことが明らかである。入院から退院までの総額を見ると、死亡患者(終末期だけではなく、重症ではあるが救命可能と考えられた患者を含んでの)医療費は生存患者として比較して在院日数が長いためやや高くなるが、それほど高額ではない。重症度を含む疾病構造の差のためと考えられる。しかし悪性新生物の場合では、一人あたりでも、1日あたりでも、いずれの年齢層でも、死亡例の方が低く、死亡例・生存例を問わず、高年齢につれ医療費は低くなる。

    高齢者は死亡率が高く、救命医療は無駄であるとの偏見があるが、私どもの病院で見る限り90歳を超える患者でも、入院死亡率は20%であり、これらの憶測も誤りであろう。「高齢者の肺炎死亡率は医療を尽くしても80%である」との高名な学者の座談会発言を読んだことがあるが、本当だとしたら、そこにおける医療の水準を疑うものである。高齢者を何歳以上とするのか明らかでないが、私どもの病院の肺炎死亡率を見ると、60歳以上の高齢者全体では20%、75歳以上の後期高齢者だけをみても30%である。

    高齢者医療の費用を論じる場合、正しいデータに基づき議論すべきで、印象で議論すると誤りを犯す。しかし、一連の老人医療費抑制のためのキャンペーンは、重症者への医療や老人医療を無駄な医療だという考えを国民に刷り込み、冷静な論議を困難にしている。長期にわたる植物状態の患者や、意識レベルの低下した長期療養患者を、集中治療の必要な患者と故意に混同し、「スパゲティ症候群」などというレッテルを貼って、無駄な高価な治療であることを強調するのはマスコミの通弊である。「スパゲティ症候群」という用語自体、集中治療への誹謗であり、集中治療を受けている患者への差別用語である。医者が迎合して使うべき言葉ではない。しかもICUに長期療養患者が普通は存在するはずがないにもかかわらず、末期の長期療養患者が医療費を浪費しているというデマゴギーを意図して、このようなレッテルが乱用されている、この誤解は正さねばならない。


    以上です。

    次回は、論文より【「老人終末期医療」という言葉の怪しさ―(脳死から安楽死へ、「死」の拡大政策)―】をご案内します。

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    この記事へのコメント

    2006年07月07日 10:01
    おはよう御座います。

    なるほど。
    終末期医療費」は高額ではなく、「後期高齢者医療」も無駄ではない
    ですか。
    具体的な数字は見たことがないのでわかりません。ただ個人的には「スパゲッティー」状態になってただの「植物状態」になってしまっているなら、(つまり法律的には死んでないという状態)そうした患者に一日何十万をかけるより、新たに生まれてくる命や子供たちの治療ににお金と労力をかけたほうが良い様な気がします。

    なかなか勉強になります。
    次回以降も楽しみにしています。

     

    現役保険営業マン
    2006年07月07日 11:20
    佐藤さん、一番コメントありがとうございます。
    …どうもわが国では、老人医療費全体が無駄であるという暴論が「正論」として成立してしまっているようです。
    本当に重要なのは「個々の無駄」を指摘し、改善することであり、老人医療費全体を根拠もなく「無駄」と一方的に切り捨てることではないはずです。

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