粒子線治療(陽子線治療、重粒子線治療)に対し、保険導入の対象案が示される。
1月14日の厚生労働省・先進医療会議において、粒子線治療(陽子線、重粒子線治療)に対し、保険導入の対象案が示されました。
このことについて、15日付の日本経済新聞・朝刊は以下のように報じています。
< 厚生労働省の先進医療会議は14日、医療費の一部で保険適用が認められる先進医療のがん粒子線治療について、症にがんのよう支線治療と手術が難しい骨のがんの重粒子線治療は有効性が示されたとして、全額の保険適用が適当だとの意見をまとめた。
対象の粒子線治療は、中央社会保険医療協議会(中医協)の議論を経て4月から保険適用となる見通し。粒子線の照射には平均300万円前後かかっており、保険適用で患者負担が軽減する。>
【管理人の感想】
管理人個人としては、厚生労働省・先進医療会議の資料「先-5-4」(PDF)を読む限り、
①保険導入の対象案が示された段階であり、対象案にある症例に対する粒子線治療が本年4月からの保険適用の見通しとなっているかは不明である。
②保険適用となるかどうかは今後の審議の結果を注視する必要がある。ただ、仮に導入案通りの保険適用となれば、先進医療適用の症例と保険適用の症例とに分かれることになるため、医療保険やがん保険を通じて給付金の支払を行っている生命保険会社は、先進医療給付金および手術給付金の保障対象、ならびに給付金支払い対象となるかどうかについての情報などを、正確・丁寧に発信する必要がある
―と考えています。
【先進医療会議における保険導入の対象案などの内容】
以下、先進医療会議における保険導入の対象案などについての内容です(上記資料より抜粋・転載)。
【粒子線治療の取扱い】
1.これまでの状況
○粒子線治療については、陽子線治療が平成13 年7月から、重粒子線治療が平成15年11月から、限局性固形がんを適応症として高度先進医療として開始され、現在先進医療Aとして実施されている。
・陽子線治療:10施設
・重粒子線治療:4施設(いずれも平成27年12月1日時点)
○先進医療会議において、平成22年の診療報酬改定以降、既存治療との比較等の問題点が指摘されながら、評価するために十分なデータがないなどの理由で、先進医療を継続する扱いとされている。特に、平成26年度改定時には、①実績を施設横断的にまとめ科学的に解析すること、②臓器等によっては前向きに臨床試験を行う枠組みでデータ収集を行うことなどを平成28年度改定までに取り組むこととされた。
2.先進医療会議からの指摘事項及び今後の検討
○第33回先進医療会議においては、施設横断的な実績のとりまとめを主導した日本放射線腫瘍学会から、これまでの取組及び臓器等別に解析したデータなどが提示された。
また、提示されなかった一部の疾患及び病態については、先進医療Aでは評価に耐えるデータの蓄積等が困難との言及がなされた。
○当該発表に対して構成員からは、施設ごとの症例集積ではなく共通のプロトコールを作成してデータ登録の中央化を行うべきなどの指摘がなされるとともに、文献収集の再実施及び手術拒否例等の適応の判定の現状を示すことなどの対応を求めることとされた。
○粒子線治療の保険導入等については、学会の対応を踏まえて検討することとされた。
3.指摘事項に対する学会からの対応及び先進医療会議における議論
○第37回先進医療会議においては、前述の指摘に対して学会から以下のとおり対応等が示された。
・客観性・透明性が確保されるよう、診療ガイドラインなどで用いられているシステマティックレビューを使用するとともに、外部評価組織として各疾患のガイドライン委員会等に参加した形で、第33回先進医療会議において示した小児腫瘍等の5疾患の既存治療等について文献検索を実施したこと(結果後述)
・適応の判定に関しては、現状の各粒子線施設の取組を示すとともに、今後の方針として複数の診療科によるキャンサーボードを設置すること
・第33回先進医療会議において、結果が示されなかった臓器・組織型に対する先進医療制度における粒子線治療の取扱いに関しては、以下の2類型のみを考えていること
①重点的な評価等が必要とされる臓器・組織型については、全粒子線施設が参加して、3月までに先進医療B への申請した上で移行を目指すこと
②それ以外の臓器・組織型については、将来にわたり評価可能となるよう、新たな施設基準(学会主導の訪問調査の受け入れ・施設間で統一された治療方針・説明同意書・全症例登録等)で実施すること
・今後の臨床研究については、生物統計家を含む臨床試験の専門家を加えて企画・立案していくこと
○学会からの発表について、会議においては以下のとおりの議論及び指摘がなされた
・今回、実施されたシステマティックレビュー(以下、「SR」という。)によって、第33回会議での発表と比較してより客観性・透明性が確保された文献が収集されたのではないか。
・今後、新たな先進医療を実施する際の症例登録については、症例をただ登録するだけでなく、解析することで、粒子線治療の有効性等の成績を明らかにしていくべき。
・小児腫瘍については、安全性が既存治療より優れていること、また希少疾患であり高いレベルのエビデンスを集めることが難しいこと。
・SRで得られた文献については、エビデンスレベルを明らかにして治療ガイドラインを作成することが望まれるとともに、ピアレビューを行って、今後対外的に発信していくべき。
・今後、先進医療Bを実施することで得られた成果を用いて、医療経済評価を実施していくとのことに期待したい。
4.粒子線治療の今後の取扱い(案)
○ 今後の粒子線治療に対する先進医療制度の取扱いは、上記の指摘及び構成員等の事前評価を踏まえて、以下のとおりとしてはどうか。
1. 保険導入の対象について
(ア)小児腫瘍については、陽子線治療の有効性と安全性が既存X 線治療に比較して上回ることから、陽子線治療を保険導入してはどうか。
(イ)切除非適応の骨軟部腫瘍については、確立された既存治療がなく、また、重粒子線治療は既存治療に比較して上回る有効性を示していることから保険導入してはどうか。なお、陽子線については、有効性を示すエビデンスレベルの高い文献がなかったことから、保険導入しないこととしてはどうか。
(ウ)切除適応の骨軟部腫瘍については、手術に比較して上回る有効性を示せなかったため、保険導入しないこととしてはどうか。
(エ)頭頸部の非扁平上皮癌については既存治療に比較して上回る有効性及び安全性を示せなかったため、保険導入しないこととしてはどうか。
(オ)肝癌については、既存治療に関する文献のエビデンスレベルが低かったことから、今回は保険導入しないこととしてはどうか。
(カ)肺癌については、粒子線の治療成績の症例数が少なかったため、今回は保険導入しないこととしてはどうか。
2. 先進医療における対応について
今後の粒子線治療の先進医療に係る取扱いは、以下の2つとしてはどうか。
(ア)学会主導による統一された治療方針に規定された適応症については、学会から提案された新たな施設基準で、先進医療A として実施する取扱いとする。
(イ)有効性・安全性等の観点から、重点的な評価が必要な適応症については、先進医療Bとしてプロトコールを作成して実施する取扱いとする。
以上です。
↑、吸蜜中のミドリヒョウモン(2014年6月撮影)。
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< 厚生労働省の先進医療会議は14日、医療費の一部で保険適用が認められる先進医療のがん粒子線治療について、症にがんのよう支線治療と手術が難しい骨のがんの重粒子線治療は有効性が示されたとして、全額の保険適用が適当だとの意見をまとめた。
対象の粒子線治療は、中央社会保険医療協議会(中医協)の議論を経て4月から保険適用となる見通し。粒子線の照射には平均300万円前後かかっており、保険適用で患者負担が軽減する。>
【管理人の感想】
管理人個人としては、厚生労働省・先進医療会議の資料「先-5-4」(PDF)を読む限り、
①保険導入の対象案が示された段階であり、対象案にある症例に対する粒子線治療が本年4月からの保険適用の見通しとなっているかは不明である。
②保険適用となるかどうかは今後の審議の結果を注視する必要がある。ただ、仮に導入案通りの保険適用となれば、先進医療適用の症例と保険適用の症例とに分かれることになるため、医療保険やがん保険を通じて給付金の支払を行っている生命保険会社は、先進医療給付金および手術給付金の保障対象、ならびに給付金支払い対象となるかどうかについての情報などを、正確・丁寧に発信する必要がある
―と考えています。
【先進医療会議における保険導入の対象案などの内容】
以下、先進医療会議における保険導入の対象案などについての内容です(上記資料より抜粋・転載)。
【粒子線治療の取扱い】
1.これまでの状況
○粒子線治療については、陽子線治療が平成13 年7月から、重粒子線治療が平成15年11月から、限局性固形がんを適応症として高度先進医療として開始され、現在先進医療Aとして実施されている。
・陽子線治療:10施設
・重粒子線治療:4施設(いずれも平成27年12月1日時点)
○先進医療会議において、平成22年の診療報酬改定以降、既存治療との比較等の問題点が指摘されながら、評価するために十分なデータがないなどの理由で、先進医療を継続する扱いとされている。特に、平成26年度改定時には、①実績を施設横断的にまとめ科学的に解析すること、②臓器等によっては前向きに臨床試験を行う枠組みでデータ収集を行うことなどを平成28年度改定までに取り組むこととされた。
2.先進医療会議からの指摘事項及び今後の検討
○第33回先進医療会議においては、施設横断的な実績のとりまとめを主導した日本放射線腫瘍学会から、これまでの取組及び臓器等別に解析したデータなどが提示された。
また、提示されなかった一部の疾患及び病態については、先進医療Aでは評価に耐えるデータの蓄積等が困難との言及がなされた。
○当該発表に対して構成員からは、施設ごとの症例集積ではなく共通のプロトコールを作成してデータ登録の中央化を行うべきなどの指摘がなされるとともに、文献収集の再実施及び手術拒否例等の適応の判定の現状を示すことなどの対応を求めることとされた。
○粒子線治療の保険導入等については、学会の対応を踏まえて検討することとされた。
3.指摘事項に対する学会からの対応及び先進医療会議における議論
○第37回先進医療会議においては、前述の指摘に対して学会から以下のとおり対応等が示された。
・客観性・透明性が確保されるよう、診療ガイドラインなどで用いられているシステマティックレビューを使用するとともに、外部評価組織として各疾患のガイドライン委員会等に参加した形で、第33回先進医療会議において示した小児腫瘍等の5疾患の既存治療等について文献検索を実施したこと(結果後述)
・適応の判定に関しては、現状の各粒子線施設の取組を示すとともに、今後の方針として複数の診療科によるキャンサーボードを設置すること
・第33回先進医療会議において、結果が示されなかった臓器・組織型に対する先進医療制度における粒子線治療の取扱いに関しては、以下の2類型のみを考えていること
①重点的な評価等が必要とされる臓器・組織型については、全粒子線施設が参加して、3月までに先進医療B への申請した上で移行を目指すこと
②それ以外の臓器・組織型については、将来にわたり評価可能となるよう、新たな施設基準(学会主導の訪問調査の受け入れ・施設間で統一された治療方針・説明同意書・全症例登録等)で実施すること
・今後の臨床研究については、生物統計家を含む臨床試験の専門家を加えて企画・立案していくこと
○学会からの発表について、会議においては以下のとおりの議論及び指摘がなされた
・今回、実施されたシステマティックレビュー(以下、「SR」という。)によって、第33回会議での発表と比較してより客観性・透明性が確保された文献が収集されたのではないか。
・今後、新たな先進医療を実施する際の症例登録については、症例をただ登録するだけでなく、解析することで、粒子線治療の有効性等の成績を明らかにしていくべき。
・小児腫瘍については、安全性が既存治療より優れていること、また希少疾患であり高いレベルのエビデンスを集めることが難しいこと。
・SRで得られた文献については、エビデンスレベルを明らかにして治療ガイドラインを作成することが望まれるとともに、ピアレビューを行って、今後対外的に発信していくべき。
・今後、先進医療Bを実施することで得られた成果を用いて、医療経済評価を実施していくとのことに期待したい。
4.粒子線治療の今後の取扱い(案)
○ 今後の粒子線治療に対する先進医療制度の取扱いは、上記の指摘及び構成員等の事前評価を踏まえて、以下のとおりとしてはどうか。
1. 保険導入の対象について
(ア)小児腫瘍については、陽子線治療の有効性と安全性が既存X 線治療に比較して上回ることから、陽子線治療を保険導入してはどうか。
(イ)切除非適応の骨軟部腫瘍については、確立された既存治療がなく、また、重粒子線治療は既存治療に比較して上回る有効性を示していることから保険導入してはどうか。なお、陽子線については、有効性を示すエビデンスレベルの高い文献がなかったことから、保険導入しないこととしてはどうか。
(ウ)切除適応の骨軟部腫瘍については、手術に比較して上回る有効性を示せなかったため、保険導入しないこととしてはどうか。
(エ)頭頸部の非扁平上皮癌については既存治療に比較して上回る有効性及び安全性を示せなかったため、保険導入しないこととしてはどうか。
(オ)肝癌については、既存治療に関する文献のエビデンスレベルが低かったことから、今回は保険導入しないこととしてはどうか。
(カ)肺癌については、粒子線の治療成績の症例数が少なかったため、今回は保険導入しないこととしてはどうか。
2. 先進医療における対応について
今後の粒子線治療の先進医療に係る取扱いは、以下の2つとしてはどうか。
(ア)学会主導による統一された治療方針に規定された適応症については、学会から提案された新たな施設基準で、先進医療A として実施する取扱いとする。
(イ)有効性・安全性等の観点から、重点的な評価が必要な適応症については、先進医療Bとしてプロトコールを作成して実施する取扱いとする。
以上です。
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