認知症の告知―分かれる意見。

9月16日の日本経済新聞に、認知症の告知についての記事がありました。

記事によりますと、

〈 認知症の告知の是非を巡り、患者の知る権利を重視する“積極派”と、患者に与える精神的負担や治療への支障を懸念する“慎重派”の間で論争が起きている。治療法が限られる認知症では、告知を受けても治療法選択の余地はほとんどなく、傷付き戸惑う患者がいる一方で、病状が安定する患者もいる。名称変更後もいまだ偏見が残る認知症。患者や家族を支える社会的支援体制の不備が告知を一層難しくしている。〉

とのことです。

…今回の記事を読んで

認知症や癌といった、患者本人のそれまでの生き方や価値観を大きく変え、家族をも精神的に打ちのめすような疾病の告知をすることだけが、「患者や家族にとって正しいこと」と決めてしまうのは問題である

―と思った管理人です。

【記事の内容】

以下、記事の内容です。

【認知症―告知巡り分かれる意見。積極派・知る権利、症状安定も。慎重派・精神的な負担大きい】
 認知症の告知の是非を巡り、患者の知る権利を重視する“積極派”と、患者に与える精神的負担や治療への支障を懸念する“慎重派”の間で論争が起きている。治療法が限られる認知症では、告知を受けても治療法選択の余地はほとんどなく、傷付き戸惑う患者がいる一方で、病状が安定する患者もいる。名称変更後もいまだ偏見が残る認知症。患者や家族を支える社会的支援体制の不備が告知を一層難しくしている。

 「ちょっと待ってください」大阪府守口市の総合病院で、初期の若年性認知症と診断された女性(55)に病名を告げようとした医師を付き添いの夫(58)が制した。まだ物事を理解できる妻。「唐突に告知すれば、どれだけ傷付くかに思いを巡らせない姿勢に不信感が募った」と夫は話す。

 診断技術の進歩や病気への理解が広がり早期受診が増えた結果、まだ初期の段階で診断できるケースが増えている。1999年にアルツハイマー病の進行を抑える薬が登場し、服薬指導の必要性も高まった。ただ根本的な治療法はほとんどないことに変わりはない。「いずれ訪れる人格への“死の宣告”を、まだ理解力のあるうちにすべきか否か」という問題が医療現場に突き付けられるようになった。

 ◇医師には説明責任
 「本人が明確に拒否しない限り、必ずすべきだ」と話すのは日本社会事業大の今井幸充教授。患者には知る権利があり、医師には病状を説明する法的義務がある。「それを『どうせ理解できない』『精神的な負担になる』など根拠の乏しい判断で告知をしないのは義務の不履行」と考える。

 今井教授は「理解力が落ちた患者でも、病気であるとその場では理解しており、告知後に精神的に安定することもある。家族も服薬や通院の必要性を説明できるし、患者も納得できる」と指摘。別の病院では「うつ病」と説明していたが、今井教授からアルツハイマー病との告知を受けた男性患者(59)の妻(48)は「隠さないことで服薬などの生活がスムーズになった。本人もかえって落ち着いた様子」という。

 一方、滋賀県立成人病センター(守山市)で「物忘れ外来」を担当する松田実・老年神経内科部長は「安易な告知を受け、途方に暮れた患者や家族の相談を何件も受けてきた」と話す。「確かに告知が理想的だが、患者が『私はボケていない』と憤り、二度と通院しなくなっては逆効果で患者にも不利益」と慎重な立場だ。

 ◇治療、「ウソも方便」
 家族が「健康診断」と偽って病院に連れてきたり、施設への通所を渋る患者に「ボランティアとして参加して」と促すなど「認知症治療ではウソも方便。『病気ではない』と信じる患者の虚構の上に成り立つ医療もある(松田部長)。告知によって患者が将来の行き方を自己決定できることや、説明が法的義務であることは百も承知とした上で「患者に最善な治療を提供するために、告知できないと判断する場合もある」と理解を求める。

 松本診療所ものわすれクリニック(大阪市旭区)の松本一生院長は診断前に本人と家族に告知の希望の有無を確認。患者や家族が望まないケースではいったん見送る。「認知症になったら人生終わり」と誤解している患者や家族に、医師の義務として告知するのは酷と考える。「患者と家族が『病を生きる』ことができると理解し、受け止める心の準備ができた時期を見極めてからでも遅くない」

 松本院長は「診断を伝えるだけでは単なる通告。患者や家族の不安を和らげ、医療、介護の相談に乗るようなフォローがあって初めて告知といえる」とも強調する。適切な告知には、安心して暮らせると患者や家族が感じられるように、医師やケアマネジャーなどが連携し支援する社会的なサポートが欠かせない。しかし、現状ではそうした体制が整っている患者はごく一部で、すべての人に告知できる状況にはない。

 冒頭で告知を拒否した夫婦は、その後、松本院長の診察を受けるようになり、1年後に決意。「奥様は忘れっぽい病気です。みんなで治療していきましょう」と告げられた。松本院長に信頼を寄せるようになっていた女性は動揺する様子もなく、静かに受け止め、治療に前向きになったという。「当初受診した総合病院で受けていたら、同じ結果にはならなかったはず。患者や家族の心情に配慮した告知を受けられて幸運だった」。夫は静かに振り返った。

 ▽認知症
 記憶、思考、判断などの精神機能が徐々に失われる状態。アルツハイマー病のほか脳卒中や外傷で脳が損傷するなど、様々な原因で発症する。かつては「痴呆症」と呼ばれていたが、侮辱的な表現だとして2004年12月に病名変更された。

 アルツハイマー病には進行を遅らせる薬があるものの、多くの場合、根本的な治療法はない。厚生労働省によると、支援を必要とする認知症高齢者は02年の149万人から15年には250万人、25年には323万人に急増する見込み。


以上です。

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