金融庁動く!!―金融商品取引法と生命保険②

前回*1の続きです。今回は、特定保険契約に該当する生命保険商品*2の、販売・勧誘における規制の内容などについてご案内します。

*1.前回の記事はこちら。
  • 金融庁動く!!―金融商品取引法と生命保険①

    *2.特定保険契約に該当する生命保険商品は以下のとおりです。
    ①変額保険・変額個人年金保険

    ②外貨建て保険・外貨建て個人年金保険

    ③解約返戻金が市場金利・価格などによって変動する商品(MVA商品)

    では、早速本題です。

    【金融庁動く!!―金融商品取引法と生命保険② 販売・勧誘時の規制内容】
    1.特定保険契約に準用される販売・勧誘時のルールと概要
    特定保険契約に該当する保険商品を、販売・勧誘する場合に適用される主なルールと概要は、以下のとおりです。

    ①広告等の規制…広告や広告類似行為(パンフレットの配布等)における「手数料(お客様負担コスト)」「市場リスク」等の表示ルールを規定。

    ②契約締結前交付書面の交付…契約締結前に、「保険会社名」「契約の概要」「手数料(お客様負担コスト)」」「市場リスク」等を記載した書面を交付することを義務付け。

    ③契約締結時交付書面の交付…契約成立後に「保険会社名」「契約年月日」「手数料(お客様負担コスト)」等を記載した書面を交付することを義務付け。

    ④適合性の原則等…(1)顧客の知識・財産等から“不適当”と判断される場合は勧誘自体を行わない。(2)顧客情報を適格に収集し、その内容に則した募集を行う。

    ⑤禁止行為…(1)適合性を考慮した(顧客属性を踏まえた)説明をしない。(2)お客様が迷惑と感じる時間に電話又は訪問による勧誘をすること。

    ⑥損失補てん等の禁止…「損失の補てん」又は「追加の利益」の申込、約束、実行の禁止。

    ⑦特定投資家(プロ)/一般投資家(アマ)の区分と移行…顧客をプロ~アマに分類して取り扱う。

    2.ルールの内容と対応のポイント
    ①広告等の規制

    Ⅰ規制の内容
    1.広告や広告類似行為*を行う場合は、以下の表示を明瞭かつ正確に行なわなければならなりません。なお、一般的な募集資料(募集文書及び募集補助資料)はこの項目に該当します。

    *広告類似行為:郵便、新書便、FAX、電子メール、ビラ、パンフレット等により多数のものに対して同様の内容で行う情報提供。

    ・保険会社名及び保険募集人名(代理店名)

    ・手数料等の金額、上限額、又はその計算方法。

    ・市場リスクに関する「指標」「損失の恐れがある旨」「その理由」(最も大きな文字と著しく異ならない大きさで表示)

    ・その他保険契約に関する重要事項で顧客の不利益となる事実。


    2.テレビ、ラジオ、インターネット、看板・ポスター等、による広告等の場合は以下の表示を明瞭かつ正確に行うことになります。

    ・保険会社名及び保険募集人名(代理店名)

    ・市場リスクに関する「損失が生じる恐れがある旨」(最も大きな文字と著しく異ならない大きさで表示)

    ・契約締結前交付書面をよく読むべき旨。


    3.販促グッズ(ノベルティー)等についは、次の4項目全てを表示する必要があります。

    1)商品名(通称でも可)

    2)保険会社名及び保険募集人名(=金融機関名)*通称でも可。

    3)市場リスクに関する「損失が生じる恐れ」(最も大きな文字と著しく異ならない大きさで表示)

    4)契約締結前交付書面をよく読むべき旨。


    Ⅱ対応のポイント
    1.9月30日から、パンフレットやチラシといった募集資料などは次のような対応となります。

    ・改訂後のパンフレット・チラシ等に変更し、改訂前のものは全て廃棄処分。

    ・改訂前のノベルティーは使用しない。

    ・改訂前のご契約のしおり・約款を全て廃棄処分とし、新約款を使用する。

    ・独自作成した、特定保険契約の承認済み募集資料は、必ず再承認を得る。


    2.9月30日からホームページは次のような対応となります(外資系生保E社のケース)。

    ・代理店等、保険会社社員のホームページに特定保険契約の名称のみ記載の場合(募集資料ではない場合も含む)、保険会社のホームページ(商品記載)に必ずリンクすること。なお、リンクする場合には、必ず本社コンプライアンス部に必ずリンクの申請をすること。

    ②契約締結前交付書面の交付
    Ⅰ規制の内容
    1.契約締結前交付書面として「契約概要」「注意喚起情報」が合本になり、下線部の項目が新設されました。

    ・契約概要の記載項目
    1)当該情報が「契約概要」であり、その内容を十分に読むべきこと

    2)保険会社名、住所、連絡先

    3)商品の仕組み

    4)保障(補償)の内容

    5)付加できる主な特約とその概要

    6)保険期間

    7)引受条件(保険金額等)

    8)保険料に関する事項

    9)保険料払込方法、保険料払込期間・配当金に関する事項

    10)解約返戻金等の水準及びそれらに関する事項

    11)特別勘定に属する資産の種類およびその評価方法

    12)諸費用に関する事項{保険関係費、資産運用関係費等(の合計額又は計算方法)}

    13)運用実績により保険金等が変動し、不確実であること及び損失が生ずる恐れがあること

    14)特別勘定のしおりを参照すること

    ・注意喚起情報の記載項目
    1)当該情報が「注意喚起情報」であり、その内容を十分に読むべきこと

    2)諸費用に関する事項の概要

    3)市場リスクに関する「指標」「損失の生ずる恐れのあること」「その理由」

    4)保険会社名、住所、連絡先

    5)クーリング・オフ

    6)告知義務等の内容

    7)責任開始期

    8)保険金等を支払わない場合のうち主なもの

    9)保険料の払込猶予期間、契約の失効、復活等

    10)解約と解約返戻金の水準

    11)セーフティネット

    12)租税に関する事項の概要

    13)認定投資者保護団体(苦情の解決・斡旋を行う業界団体)の有無(ある場合は名称)


    14)その他、特に法令等で注意喚起することとされている事項

    2.金融商品取引法では、従来の「契約概要」「注意喚起情報」上の項目に加え、①お客様が支払う諸費用、②該当商品における市場リスク、③税金の取り扱い等についての記載が必要です。

    3.特に重要な商品の仕組み、損失が生じる恐れがある旨は12ポイント以上の大きさで記載し、諸費用の概要、市場リスクに関する指標・損失の生ずる恐れがあること等は、「注意喚起情報」の冒頭枠囲み内に12ポイント以上で記載する必要があります。

    Ⅱ対応のポイント
    1.商品提案の早い段階(契約申込をいただく前)で、「契約締結前交付書面(契約概要・注意喚起情報」を必ず渡して内容を十分説明する。

    2.契約締結までに、お客様が内容(保険商品の仕組みやリスクなど)を理解するための十分な時間を確保する。

    ③契約締結時交付書面の交付

    ・規制の内容

    ・今回、金融商品取引法によって、保険証券とは別に、契約が成立した時は、遅滞なく法令に定める事項を記載した「契約締結時交付書面」を作成し、お客様に交付することになりました。記載項目は以下のとおりです。

    なお、保険証券に記載されている項目については、改めて記載する必要はなく、また、保険保険会社が保険証券などの交付とあわせて送付することになります。

    ・契約締結時交付書面の記載項目
    1)保険会社名

    2)契約年月日

    3)手数料に関する事項

    4)契約社名、被保険者名、保険金受取人名

    5)保険会社の連絡先

    6)保険契約の種類、内容

    7)保険金額

    8)保険期間の始期・終期

    9)保険料及びその払込方法

    ④適合性の原則等
    Ⅰ規制の内容
    ・従来の証券取引法では、投資者保護の観点から金融商品を提案するにあたって「お客様の知識、経験、財産の状況」の確認を行ない、不適当と認められる勧誘を行ってはならないことを規定していました。

    金融商品取引法では、さらに「お客様の知識、経験、財産の状況」に加えて「金融商品取引契約をする目的」が新たに追加されます。つまり、お客様に知識、経験、財産はあっても、安全な運用を思考されるお客様には、損失のリスクのある商品を勧誘すること自体が禁止となります。

    ・適合性の原則に反する恐れがあるケース
    1)複雑な商品を理解することが困難な高齢者など

    2)投資経験の浅い方、あるいは全くない方

    3)元本の安全性を最重視し、リスクを絶対に回避したい資金

    Ⅱ対応のポイント
    1.適合性を判断するために、以下の情報を募集活動の中で段階的に収集します。

    ・生年月日

    ・職業

    ・資産、収入等の財産の状況

    ・投資経験の有無、種類

    ・特定保険契約の保険料の原資

    ・契約締結の動機・目的、その他顧客ニーズ情報


    2.適合性を確認し、特定保険契約の勧誘が適当であることを確認できた場合だけ、プレゼンテーションに進むことができます。

    3.適合性が判断できない場合は、適合性はないものと考えます。つまり特定保険契約の勧誘はできません。

    4.運用リスクが取れない資金を特定保険契約の保険料に充当させてはいけません。

    5.説明によってお客様にご理解いただければ、お客様に投資経験や知識がないからとって、特定保険契約の勧誘をしてはいけない、というわけではありません。

    ⑤禁止行為

    ・規制の内容
    禁止行為には、従来からの保険業法300条1項及び同法施行第234条第1項各号に掲げられた行為に加え、以下の2項目が追加されています。

    1.顧客が特定保険契約の内容を理解できる方法や程度で説明することなく募集する行為
    契約締結前交付書面をお客様に渡す際には、「設計書」「パンフレット」「重要事項説明書(契約概要・注意喚起情報)」の内容について、お客様の知識、経験、財産の状況、特定保険契約を締結する目的に合わせて、お客様が特定保険契約の内容を理解できる方法や程度で十分に説明する必要があります。

    この“説明”については、お客様に重要事項説明書などを渡し、十分読んでいただくことを要請しただけでは説明義務を果たしたことにはならず、お客様が特定保険契約の内容を理解できるように口頭でお伝えしなければならないことになっています。

    また、説明の方法や程度はお客様によって異なりますが、投資経験や知識が無いか、もしくは浅いお客様や高齢のお客様に関しては特に注意が必要で、どれだけ説明しても十分に特定保険契約の内容をご理解いただけない場合においては、特定保険契約の勧誘を行わないという判断を求められるケースもあります。


    2.迷惑時間勧誘
    お客様が迷惑と感じる時間には、電話や訪問による勧誘をしてはならないことになっています。

    ⑥損失補てん等の禁止
    ・規制の内容
    1.お客様への利益提供に関する次の行為を行ってはいけません。

    1)(損失や利益が生じる以前に)「損失の補てん」又は「利益の追加」の申込・約束を行うこと。

    2)(損失や利益が生じた後に)「損失の補てん」又は「利益の追加」の申込・約束を行うこと。

    3)「損失の補てん」又は「利益の追加」を実行すること。

    なお、反対にお客様が「損失補てんを要求すること」等も禁止されています。


    2.「損失の補てん」については「事故*」による場合は禁止されません。

    *事故とは、保険会社、保険募集人等の「違法又は不当な行為」であってお客様との争いの原因となるものです。

    ・保険会社の事務ミスや募集人の誤った説明等により損害が発生した場合は、準用金融商品取引法39条に規定されている「事故」に該当するものと考えられます。

    ⑦特定投資家(プロ)/一般投資家(アマ)の区分と移行

    ・規制の内容
    ・お客様は、すべて特定投資家(プロ)と一般投資家(アマ)に区分されます。またプロもアマもそれぞれ移行できるプロないしアマ、移行できないプロないしアマに区分され、プロに対しては「広告等の規制」「適合性の原則」「契約締結前の書面の交付」「契約締結時等の書面の交付」などの販売・勧誘ルールが適用されないことになっています。

    しかし、特定保険契約においてはプロのお客様でも適用除外をしません。つまり特定保険契約の募集においてはお客様がプロであってもアマと同一の取り扱いとなります。

    そのため、特定保険契約の募集ではお客様がプロであっても、販売・勧誘時のルールがすべて適用されます。



    以上です…ふうε=(-.-;)。

    今回で、金融商品取引法と生命保険についての連載は終了です。ありがとうございました。「金融庁動く!!」は、今後新たな動きがありましたら、また再開します。

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    この記事へのコメント

    2007年10月01日 22:16
    こんばんは。
    「コンプライアンスは自分の身を守るためでもあるのです」と研修で言われたことがあります。
    お客様の為もさることながら、自分の為にも徹底しなければいけませんね。
    いつも改定があるたびに、大量のパンフ・約款等を処分しなければいけません。非エコだなぁ・・・って毎回思ってしまいます。
    現役保険営業マン
    2007年10月01日 23:28
    とことこママさん、こんばんは。
    一番コメントありがとうございます。
    >お客様の為もさることながら、自分の為にも徹底しなければいけませんね。
    >>そうですね。自身を律するためにも徹底しなくてはならないでしょう。ただ…今回の法規制はやり過ぎだと思います。ここまで販売サイドを締め付けるのなら、初めから規制緩和をするなよ!!と言いたくなることがあります。

    >いつも改定があるたびに、大量のパンフ・約款等を処分しなければいけません。非エコだなぁ…って毎回思ってしまいます。
    >>同感です。毎度毎度シュレッダーで処分するのですが、本当に紙とインクを無駄にしてますよね。重要事項説明書などはいっそのことPDFファイルにして、ダウンロード→印刷という方式にした方が無駄がないと思うのですが…。

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